ピーマンの肉詰めをスープ煮にすると
とてもおいしいのでよく作る。
作るときにはいつも
脳裏に思い浮かぶ出来事がある。
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親友Yの4才年上のお姉さんは
東京の美大に通っていた。
高校生の頃 親友とふたりで
お姉さんのアパートに遊びにいったことがある。
たしか秋の連休だったと記憶している。
お姉さんは夕食に
ピーマンの肉詰めを作ってくれた。
なぜか母はほとんど作らなかった
その目新しい料理はとても新鮮だったし
わたしは料理をしたことがなかったから
お姉さんが台所に立つ姿を見ながら
その暮らしぶりにひそかに憧れた。
暫くするとお姉さんの恋人もやって来て
みんなで一緒にごはんを食べた。
ドラマで見るようなオトナの世界だ。
本当にこんな生活があるのだとドキドキした。
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結局 いちども
独り暮らしをすることはなく
今に至っている。
料理は好きだ。いつの間にか ちゃんと作れるようになった。
お姉さんは地元へ戻って
数年後に別の人と結婚した。
あの日のことは
なぜか今でもよく覚えている。