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卒業の日に。


今日は中学校の卒業式だそうだ。

自分のときのことを思い出してみる。

しかし大した思い出はない。

校長先生の言葉も覚えていない。

(ゴメンナサイ)


人生最初の試練とも言える高校入試を目前に控えていたというのも大きい。

思い入れのない日のことは  年とともにどんどんぼやけていく。


でもほんのすこしだけ覚えていることもある。

それほど深く付き合っていなかった同級生と (その日になって)もっと話しておけばよかったと深く深く後悔した。彼女とふたりで少しだけ泣いたのを覚えている。進んだ高校も違い  すっかり疎遠になってしまった。


寒い体育館での式が終わったあと  教室へ戻って担任から最後の話を聞いた。これも覚えていない。

(ゴメンナサイ)

解散していよいよ玄関を出る時に 部活の後輩が泣きながらプレゼントを手渡してくれた。そんなに慕われていたとは知らなかったので 嬉しいというよりは当惑したのだった。

(ゴメンナサイ)

刺しゅう入りのクッション。前々から準備していてくれたのだろう。もっと感謝の気持ちを表せばよかった。

こんなちっとも優しくない先輩で本当に申し訳ない。


その頃は今みたいに

父親が仕事を休んでまで両親揃って

卒業式に出席するということは少なかったように思う。

入学式以来3年ぶりに母と  家までの帰り道を歩いた。

母は運転免許を持っていなかったし

天気もおだやかで

タクシーに乗るほどの距離でもなかった。

妹弟がいたこともあり

母とふたりで出かける機会はめったになかったと思う。

なんとなく押し黙って歩くうち

ふいに母が「寄っていこうか」と喫茶店のドアを入った。

低く音楽が流れる大人の雰囲気にすこし緊張しながら  

母にうながされて壁側の席に座る。

通学路の途中に喫茶店があることを知ってはいたが

もちろん入るのははじめてだ。

母はコーヒーを

わたしは少し考えてからホットココアを注文した。

しばらくして運ばれてきたココアには

生クリームがのっていて  

熱くて  そしてとても甘かった。

わたしと母は黙ってそれぞれの飲み物を飲んだ。

そしてまた歩いて帰った。

ただそれだけのこと。

もうずいぶん前なのに  この時期になると  ふと思い出す。

あの店はまだあるのだろうか。




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(*´꒳`*)

  • (*´꒳`*)
  • 2018/03/06 4:30 PM
   
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