春も夏も秋も冬も
あなたをずっとおもっている
笑いながらあるいていこう
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Sunday 3:30P.M.


彼女は車を降りると
勢いよくドアを閉めた。
コンビニエンスストアへ入り
コーヒーをふたつ買って出てくると
車の中の僕にひとつ渡して
自分は外で川を眺めながら飲んだ。
風がなく比較的暖かい日だった。

彼女はコーヒーを飲み終えると
カップをゴミ箱に捨て
車に乗りこんだ。
彼女は何も言わなかったし
僕も何も言わなかった。




火の思
cape farewell


彼女の髪は絹糸のように細い。
だからよくうなじのところで
もつれてからまっていて 
それを気にしている姿が可愛かった。

腕まくらをするとすぐ絡まるのよと言うくせに
僕の腕をひょいと持ち上げては頭をのせていたものだ。

ある晩 家に帰ると
彼女はばっさりと髪を切り
少年のようなショートカットになっていた。
僕は思わずすっとんきょうな声をあげた。

髪 どうしたの?!

うん さっぱりしちゃった

と彼女。

心境の変化?

うん 心境の変化。

その口調から それ以上訊いてくれるな、という彼女の意思を感じた。
だからもう僕は何も言えなかった。
そして腕まくらをしても髪が絡まることはなくなった。

それから3週間が過ぎた頃 彼女は僕の前から姿を消した。

髪を切ったのがどんな心境の変化だったのかを僕が知るのはもう少し後になってからだ。



ネムネムの木。
子供にも読み聞かせのできる、おはなしを書いてみました。
よかったら読んでみてください。

遠くの親戚より近くの友人?
父が突然、体調に異変を訴えた。
高校3年生の3月。それは受験の日の朝のことだった。
母に促されて受験したけれど、その日のことは何も覚えていない。

帰宅してから急いで病院へ向かった。
急きょ入院した父の病名は脳血栓。父は当時49歳。
まだ末の弟は小さく、ワタシたちは不安に駆られた。
母だけが病院に泊まりこむことになり、ワタシたち きょうだい4人は家に戻った。
その晩は眠れなかった。ひたすら父の回復を願って祈った。

次の日 病院へ行ってみると、薬が効いて、父の病状は好転していた。
母は数日間、付き添うことになったと言った。
ほっと一安心して家に戻ってきたものの、みんなの食事を作らなければならない。
でも、何をどうすれば・・・
すると その時 ドアチャイムが鳴った。
玄関に出てみると、母の親しい友人、伊藤さんだった。

笑顔で包みを差し出して、
「びっくりしたでしょう?大変だったわね。
はい、これ。あとは揚げるだけだから。
それからこれ、千切りキャベツね。
それじゃ、おかあさんによろしくね」
と 言い残して、伊藤さんは風のように行ってしまった。
手渡されたのは、パン粉がついて揚げればすぐ食べられる状態のヒレカツと
ポリ袋に入った千切りキャベツ。

それまで母の手伝いはしていても、まったくと言っていいほど料理を作ることはしていなかったので、
実は食事をどうするか途方に暮れていたのだ。
近くに親戚もなく、頼る人はいない。そんな時、さっとやってきて、
必要最小限のことだけ言って帰っていく伊藤さんの心遣いに、
嬉しくて涙が出そうだった。
そしてそういう友人を持つ母が誇らしく、うらやましいと思った。
その夜のヒレカツは格別の味だった。弟はごはんを何杯もおかわりした。

翌日、母にそのことを話すと、
「伊藤さんは、そういう人なのよ」と微笑んだ。
その後、2週間ほどで父は退院できた。
しかしワタシは これですっかり料理好きに。。。とは ならなかった。
この時から料理を始めていれば、もっと上達していたかもしれない。
必要に迫られないと手をつけないのは、昔からのクセだろうか。
将来困らないように、ムスメには今のうちに料理を仕込んでおかなければ、と思う。





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休日はランチビール。
「最近、ずいぶんお疲れじゃない?」

と、新聞を読んでいたオットが言う。曇りの日曜日、午前11時半。
ムスメは義母とショッピングにお出かけで家の中は静かだ。
確かに、オットの言うとおりかもしれない。
このところ仕事がたてこんでいて、
夕食の後片付けが終わるやいなや布団に倒れこむ状態。
週末になってもなかなか起きられない。
ましてや出かける気分にもなれずにいた。

 「ここは、ランチビールといこうか」
  「それ、いいね!」

冷蔵庫の野菜室を覗き込んで、さっそく おつまみの調達だ。
インゲンとナガイモを発見。とろけるチーズもあるし、パルメザンチーズもあった。
ゴボウも見つけた。
よーし、と腕まくり。急に張り切ってしまう。
もちろん、オットにも手伝ってもらいましょう。
出来上がったのはインゲンのぺペロンチーノ、ナガイモのチーズ焼き、ゴボウのから揚げ。
残りご飯があったので、味噌おにぎりも作った。
オットがいそいそとテーブルにお皿を並べ、冷えたビールをグラスに注ぐ。

それでは、乾杯!いただきまーす。
隣の部屋でお昼寝していた猫のチビーナもリビングにやってきて、
すぐ隣で喉をゴロゴロ鳴らしながらくつろぐ。
BGMはボサノヴァがいいかな、と思っていたら、
テレビっ子のオットが うん、と言わない。まったくもう。
酔っていい気分になったら少し元気が出てきた。
夕方には散歩に行こうかな。





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あの夏、ナスの揚げびたし。
「あなたの作るナスの揚げびたしが食べたいみたいだから、作りに来てちょうだい」
それは義母からのメールだった。
2004年の夏のこと。我が家は7.13水害で床上浸水の被害に遭い、
住まいの補修のため、1か月半 それぞれの実家に身を寄せていた。
心に重くのしかかる先々への不安。
自分たちの暮らしと、実家との暮らしはリズムも違い、実の親子であっても肩身が狭い。
さらには暑さも追い討ちをかけ、私は精神的にピリピリしていた。
ムスメは朝 起きられなくなり、気づくと笑うことも少なくなっていた。
オットはオットで彼の実家から毎日 車で1時間かけて通勤し、身も心も疲れていたと思う。
そんなある日、義母からこのメールが届いたのだった。
うれしくてすぐにムスメとふたり、ナスを買ってオットの実家へ向かった。
平日は離ればなれのパパ(オット)に会えるとあって、ムスメは大はしゃぎ。
さっそく台所を借りて、ナスを下ごしらえし、素揚げする。
日が暮れた頃、義母も義父も義妹も帰ってきた。
それから やや遅れて、ようやくオットも帰ってきた。
「おかえりなさ〜い」と出迎える私たちに、ほっとして嬉しそうな顔をするオット。
みんなで食卓を囲み、ムスメが声を上げて笑う。
それを見ていると気持ちがずいぶん楽になるのがわかった。
実際にオットが
「ナスの揚げびたしを食べたい」と言ったのかどうかはわからないけれど、
義母のメールのおかげで 私たちはとても救われた。
毎年、ナスが美味しい時期になると、せっせと作るナスの揚げびたし。
そのたびに、あの夏を思い出す。






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彼女に作る、紅茶豚。
ある金曜日、お昼休みのこと。
「お疲れさまです」
28才、独身の鈴木くんは会社の後輩。聞けば最近、彼女ができたと言うではないか。
「実は今度の休日、彼女が僕の家に遊びに来るんです。
内緒で料理を作って、驚かせたいと思うんですけど、僕、不器用で。
やっぱり外食するほうがいいかなあ」
そこで、「紅茶豚」のレシピを教えてあげた。
これなら初心者でも失敗がなく簡単にできて、おいしくて、ご飯にもお酒にも合う。
タレの工夫次第でアレンジが利くから、我が家でも月に一度は作っている人気のメニューだ。
(あ、そういえばオットにはまだ教えてなかった。家に帰ったら、さっそく教えなくては)
鈴木くんは熱心にメモを取り、買い物リストまで確認して、うれしそうに仕事に戻っていった。
週が明けて月曜日。鈴木くんは、ピカピカの笑顔。元気いっぱい、幸せオーラ全開だ。
「大成功でした。ありがとうございました」
テーブルには小さな花束とワイングラスを用意し、彼女におすすめのスイーツを買ってきて欲しいとリクエストして、
自分は仕込んでおいた紅茶豚と温野菜サラダ、バゲットを並べて、部屋で彼女を待った。
ドアチャイムが鳴り、部屋に入ってきた彼女はテーブルを見ると、まず驚いて、それからたいそう感激したそうだ。
鈴木君は言う。
「彼女に『紅茶豚』って名前を教えたら、『紅の豚』みたいだって笑い転げて、その顔がまた、ものすごくかわいいんですよ。」
・・・はいはい、ごちそうさま。                                                         



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哀愁のミネストローネ。
 「ただいま」
家に着いて、荷物を置く。ため息をひとつ。こんな日も、あるんだ。
朝、寝坊した。メークもそこそこにあたふたと出勤。
仕事で自分でも笑ってしまうようなイージーミスをした。自分のせいだから仕方がないんだけれど、へこんだ。
天気予報が外れた。干してきた洗濯物が湿っていくのを思い浮かべただけでも、気分が沈む。
帰り道は ことごとく信号に引っかかった。
立ち寄ったお気に入りのベーカリーでは、ほとんどが売り切れ。残っていたフランスパンを、ひとつ、買う。
こんな日は、ミネストローネ。家にある野菜を刻む。ひたすら刻む。
刻んでいるうちに、涙が出てくる。これはタマネギのせいであって、決して泣いているわけじゃない。たぶん。
煮えるまでの間、一足早くワインを飲み始めてみたりして。

そろそろ、煮えたかな。塩コショウで味を調え、お皿によそう。口に入れると広がる野菜の甘み。
心まで温まってくる気がする。
湿っぽくなった洗濯物を乾燥機にかけて、お風呂にゆっくり入ろう。
 
明日はきっと、いいことがあるさ。あるに決まってる。







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ためいきふうせん。
いやなことがあった日は

ためいきをあつめて

風船をふくらませる。

口をギュッと縛って

ぶんぶんふりまわして

それからバチン、と割る。

バイバイ。